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旅の宿は時に不条理

あー、鼻水が。
あー、咳が。
あー、寒気が。

連続上京で体力を削られたせいか、風邪が悪化。
そんなわけで、本日は一日寝て過ごす。いつもは風邪なんてそんなにこじらせないんだけれども、やっぱ、違うなビジネスホテルは。
どうしてこう、ビジネスホテルというのは、室内の空気が激しく乾燥しているのか。
健康なときにとまっても、なんだかのどや鼻の調子が悪くなる場所だから、風邪の引き始めに泊まるのは致命的だな。

そんなわけで、私は、ビジネスホテルが大嫌いだが、ビジネスホテルのほうは私の財布と相性がいいらしくて、これはもうラブラブで、もうドンだけビジネスホテルに泊まったか、覚えてないほどだ。

学生の頃から旅するのが大好きだったが、当時はバイクに乗ってツーリングなどしていたのと、やはり学生の悲しさ、金がないこともあり、旅の宿はテントとか、ちょっとましになるとユースホステルだった。風呂入らず、蚊にはたかられる、寒い時期にはフライシートが薄く凍っていたり疲れ薄汚れて旅していたけど、若かったので、そんな宿でも結構楽しめたものだ。

ビジネスホテル、に泊まり始めたのは、勤め人になってからのことだ。

当時の職場は何かと出張が多くて、出張には交通機関と宿がセットになったチケットを使うことが多かった。予算も限られているので、まぁ、宿はいつもいつでも悲しいまでのビジネスホテル。
「たこちーうさん、出張いいですねぇ。おいしいもの食べたり、宿もいいんでしょう?」
って事務屋のネーちゃんから言われたときには

「おうおうおう!あんたら、そんなにいい思い出来るほどの予算だしてネーだろうが!」

っと、「瞬時にこめかみ青筋」で怒りたくなるような、素敵なビジネスホテル差加減。

さて、素敵なビジネスホテルとは、
1.入った瞬間、細長ーいスペースの向こうにうすーいベッドカバー兼布団の取り付けられたシングルベッド(シーツの間に体をも繰り込ませるときに不吉な気持ちになるほど、きっちりと取り付けられている)がある。
2.何はともあれテレビ(絶対についている有料エロ番組)と電熱湯沸かし器となんで出来てるのかよくわからない味の緑茶パック(飲んでるうちにしみじみと悲しい気持ちになる不思議な味)
3.存在の耐えられない軽さのプラスティック電話機(モーニングコールの設定にしか使わない。コールの機械音声がたまらない味気なさ)にメモ帳(前の客の書き込みがうすーく残っている。「モモちゃん、5000円」ってなんだぁ!)
4.全国津々浦々、寸部違わぬユニットバス(使うと歯茎から血が出る歯ブラシや頭のはげそうな凄いにおいのするリンスインシャンプーなど、憎い「アメニティー」がてんこ盛り)。
5.使う気の起きない各種サービス案内と、どういう人が読むのかわからない旧新約聖書と仏教経典が詰まった机の引き出し
6.大抵、隣のビルの壁しか見えない悲しい窓
7.わびしい気持ちを更に盛り下げてくれるこれ以上ない安っぽい壁のパステル画や版画

仕事で疲れた体を「ああ、私は二枚貝」という気持ちでシーツの中に詰め込めば、
「あー、部屋の構造はどの部屋も同じだよなぁ、ということは同じ格好で上も下も横の部屋もみーんな同じ格好で寝ているわけだ・・・どんなおっさんだろうがオバ半だろうかなんだろうか、みーんな「二枚貝として」同じ格好で寝ているわけだ。おお、合わせ鏡の中の鏡の回廊状態よのう・・・」
と、火星とかどこか知らない天体にほたりこまれたような、寂寞とした気持ちで眠りにつけるわけである。
これに、

朝からどうしてそんなもの食べれるかなぁ、カレーとかって、おいおい食ってるよ皆!

の「雑種各種取り揃えましたげーっぷ朝食ビュッフェ」がつくと、勤労意欲ってにゃにって、もう朝から疲れている。

出来れば、ビジネスホテルなんて泊まりたくないなぁ、といつも憎憎しげに思っていたが、仕事の性格上、それは不可避であったので、
「ああ、次はどんなビジネス振りかしら」
と、最後あたりはほとんどマゾ的にビジネスホテルを楽しむようになってしまったものだ。
時折、妙なものの付いたビジネスホテルに当たってしまうこともあり、そんなときにはもう、
「ああ、女王様にさんざじらされ鞭打たれるマゾはきっとこんな気持ちに違いない!」
というヨロコビまで得るようになってしまった。
まー、これが

・天井でねずみの運動会が催される襤褸、もとい由緒正しいビジネスホテル、とか
・部屋に入った瞬間ベッドがないのであわてるが、壁のスイッチを入れるとつり天井のように天井から「ういーん」とベッドが下りてくるミラクルに蛸壷狭い(ベッドを下ろすと足の踏み場がなくなる)知的ホテル(知的を英語に変えてみよう。そういう名前だったんだよ)、とか、
・ドアをノックする人がいたら絶対にあけないで、フロントに連絡を!って恐ろしげな注意書きのある関西のビジネスさんとか、
・「飛び出すアダルトビデオ」観賞用、赤青セロハンにワイパー型斜光機のついたイカレタ立体めがねが付いているテレビのあるこれも関西のビジネスさんとか、
・空気清浄機が備え付けられているのにすい続けると肺がんになりそうなくらい物凄いタバコ臭いビジネスさん、とか

金払って、なぜこんな不条理な、といいたくなるような、様々なビジネスホテルども。
「東南アジアなんかよー、5000円も払えば、ものすごーく快適なホテルにとまれるよーぅ。しくしくしく」
って、シックハウス症候群の人が泊まったらまず間違いなく緊急入院しちゃうようなあのビジネスホテルの部屋で何度夜を明かしたことか。

仕事をやめて野良犬生活になってからは、ビジネスさんも縁遠くなってしまったので、ま、いいか、って思っていたら、あなた、最近はなぜかまた、連泊する光栄に恵まれやがって、こうして風邪までこじらせる始末。

そうそう、今回はネットで見つけた上野の安いビジネスさんだったが、ここは山谷の商人宿とそっくり同じつくりで、ベッドの横を横歩きしないといけない狭ささ差加減。天井は妙に低いし、作り付けのバストイレはバストイレというよりは「風呂場と便所」でだった。天井からはなぞの管がテレビ台の上にあって、ペットボトルに水を溜めているし、窓はないし、
「こ、ここって台湾とか韓国の安い旅館じゃないのか?」
という、素敵な風情であった。

レセプションの受付のオバ半が客を全く信用してない客あしらいなのが、鋭すぎるぜ!

こんなビジネスさんに泊まるくらいなら、山谷の商人宿のほうが安いし、いいよねぇ、って、今回はスーツなど着なければならなかったので、それもかなわず(あそこをスーツ姿で歩く気はさすがに起きなかった)、

ぅんごーーーーん

っと、妙な静けさのある騒音を立てるエアコンを子守唄に、眠りの浅い夜を過ごして、風邪悪化なのである。

寝るだけの場所だから、どうでもイイもんねぇ、って、そういうわけには行かなくなったわが身をじっと反省する機会を与えてくれた上野の安ビジネスさん。

ありがとう、でも、もう絶対泊まらないから。
げほげほげほ!ずずーっ!

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